Meta(旧Facebook)の仮想通貨Diemの提供断念、中止の理由とは

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Meta(旧Facebook)の仮想通貨Diemが提供断念、中止の理由とは

Meta Platforms(旧Facebook)はVISA、PayPalなど複数の大企業と連携し、新しい仮想通貨(libra)の開発を行っていました。

その後libraはDiemという名前に変更するという発表があり運用開始時期も公表されていました。

しかし利用開始時期が近づくと、開始の予定がどんどん先延ばしとなり、ついに2022年1月31日に開発の中止を発表しました。 今回は、その仮想通貨Diemの開発が中止となってしまったのか解説を行っていきます。

Meta (旧facebook)とはどのような企業?

Metaという会社名に聞きなじみがないかと思いますが、元の社名は世界の大企業GAFAの1つであるFacebookです。

正式名称は[Meta Platforms(メタ プラットフォームズ)]で2021年10月28日に社名変更を行いました。 創設者はハーバード大学卒のマーク・ザッカーバーグという人物で、カリスマ性が高く、斬新な発想で世界のIT業界を牽引している存在です。

MetaはFacebook時代に開発したSNSである[Facebook]、[Instagram]などのサービスが代表的で、広告事業やアプリケーション開発が主な収入源です。

Facebookは なぜ社名変更したのか

ここ数年のIT業界は仮想通貨、ブロックチェーン、NFT、メタバースなど新しい技術が流行したことにより、サービスの幅が広がりビジネスのチャンスも広がってきています。

ブロックチェーン技術の誕生により仮想通貨、NFTというサービスが可能になり、その2つを利用してサービスの幅を広げることが可能な「メタバース」というように、全ての技術は別物ですが繋がりを見せています。

ここで企業が、どの方向性に力を入れるかというポイントを明確にすることにより、5Gの時代に突入するこれからのIT業界を牽引するサービスの開発を目指し各大企業は奮闘しています。

GAFAでいうとGoogleは検索エンジンや独自のIAシステム、AmazonはAWSによりクラウドサービスを完全に牛耳っており、AppleはIoT製品の開発、GAFAで唯一エンドユーザーに物理的製品を販売しているという状況です。

5G時代の4種の神器」といわれるIA,cloud,IoT,blockchainの内3つを他のGAFAに支配されているという状況です。 そこでFacebookはメタバース業界の牽引、メタバースに力を入れて事業に取り組むことを目標とし、社名を「Meta Platforms」へと変更を発表しました。

これはメタバースというまだ未発展の業界をいかに支配し、メタバースといえばMeta Platformsというイメージを定着させることが目的です。

仮想通貨の誕生目的と価値について

Diemの開発目的を解説するにあたって仮想通貨の誕生理由や現在の状況の解説は必要なので、簡単ではありますが、今回はまず仮想通貨の誕生目的について解説させていただきます。

現在の通貨(お金)は国や銀行に管理(中央管理制)されており、その価値は管理者が自由に操ることが可能という状況です。そんな通貨の在り方を見直すために元祖仮想通貨である「ビットコイン」が[Satoshi Nakamoto]という人物の論文によって誕生し「銀行や国」に管理されない、利用者でその価値を保証し合う(P2P)通貨の実現をブロックチェーン技術を用いて可能にするという目的がありました。

現在の通貨(お金)に代わる通貨を目標として生み出されたビットコインですが、個人の大量保有、大量売却によって価値の変動は激しいため、全く安定しておらず、とても現在の通貨に成り代わる決済手段とはなることはできませんでした。

仮想通貨Diem(旧Libra)の開発

国や銀行の管理(中央管理制)する通貨に成り代わる通貨を生み出す目的で、利用者で価値を保証し合う分散管理(P2P)の仮想通貨は利用開始されましたが、それでも「価値の安定」という面でうまくいかず今の仮想通貨は、通貨としての機能はなく投資の対象商品レベルとなっています。

そこでMeta(旧Facebook)は両方の管理体制の間をとった仮想通貨の実現を目的として、「Lira」の開発を開始します。

「Libra」は国や銀行の管理(中央管理制)でも、用者で価値を保証し合う分散管理(P2P)でもどちらでもない 「世界の企業連合」が価値を保証する仮想通貨であれば、安定した価値の仮想通貨が実現できると考えました。

企業連合にはFcebookをはじめ、PayPal、eBay、VISA、Mastercardと名立たる企業で共同開発し、仮想通貨の価値の保証を行うというものでした。

Diem(旧Libra)の開発断念 -プロジェクト中止-

企業連合(Libra協会)が開発を進めるという新しい仮想通貨Diem(Libra)は、2022年1月31日に開発断念を公表します。 その理由は根本的かつ致命的なものでした。

マネーロンダリング(資金洗浄)の観点

マネーロンダリングとは日本語では資金洗浄といわれ、麻薬取引や脱税などの犯罪行為で得た資金を、資金の出所をあやふやにする目的で、 架空、他人名義での口座を利用して送金を繰り返す行為や、株の購入を行う行為のこといいます。

もちろんマネーロンダリングは法律で禁止されている行為ですが、Libra(Meta)が主流の通貨となった世界を想定すると 仮想通貨取引の高い匿名性により、そのような犯罪行為が容易になってしまいます。

銀行口座が不要で送金などの取引が行えるため、麻薬の売人やテロリスト、暴力団関係者などの利用を懸念する声が多く、実現が危惧されました。

金融関連企業の脱退

Libra(Duem)が現在の通貨に置き換わる世界になった場合、給料が仮想通貨で支払われ、普段の決済にも仮想通貨が普通に利用されるという世界になった場合、国は自国の通貨の価値のコントロールが不可能となります。

そのような理由に加え、上記のマネーロンダリングへ利用される懸念もあり、各国の金融当局はLibraの開発連合にかかわっている金融関連企業(VISAやMastercardなど)へ向け、辛辣な対応を見せ、批判が相次ぎました。

金融当局と敵対することは金融関連企業として本業に影響を与えてしまうと判断し、連合の一員であった金融関連企業は、Libra協会の脱退を決断することとなりました。

VISAとMastercardといった大手クレジットカード企業が脱退したことで、Libraの開発が成功しても決済可能な店舗が大幅に少なくなるという影響があり実現が難しくなりました。

世界規模で発生する「取り付け騒ぎ」の懸念

預金している金融機関で、その金融機関が破産する可能などの情報が出回った場合、 金融機関や金融制度への信用不安などから、預金者が預金、貯金、掛け金などを取り戻そうとします。

このような混乱状態のことを「取り付け騒ぎ」と呼びます。 これは企業連合が管理するLibra(diem)も同様で、Facebookやその他企業への信用不振、経営状況が悪化した場合 「取り付け騒ぎ」が金融機関よりは発生する可能性は高く、 更に仮想通貨は世界で利用される通貨ということで、影響は世界的な規模で発生することとなります。

通貨主権を民間企業が担うということ

Libra(Diem)が通貨として機能した場合、現在「中央銀行」が行っている通貨の発行や発行益の取得、財政のコントロールする機能などの「通貨主権」(Monetary Sovereign)を、銀行ではないFacebookという民間事業者が担うことになります。 これに対して各国当局は強く反発しました。

なぜならLibra(Diem)は、預金や国債を裏付け資産として持つことで、通貨の価値を保証を実現しプロジェクトを進めようとしていますが、そういった預金や国債などの金融秩序の維持を今まで行ってきたのは、各国の中央銀行や当局です。

このような金融システムや通貨を安定させるための仕組みへの貢献もなく、 もう十分基盤が出来上がっている各国通貨の信認に乗っかり、自社で管理できる通貨の発行を行おうとしているので、 批判の声が多く上がることも不思議ではありません。 またこのFacebookと連合企業に対する批判や不信は、価値の暴落にも繋がるということです。

2022年1月31日 プロジェクト中止、協会解散

上記のような問題が生じ、Meta(Facebook)率いる企業連合は、プロジェクトの改正案「Libra2.0」を公表するなど対応を行いましたが、各国当局などからの批判は収まらず、問題に対する根本的な解決も達成できませんでした。

2022年1月31日に協会の解散、資産の売却を行い、集中管理型と分散管理型の中間をとった仮想通貨の実現は失敗と終わりました。