LoRaWANとは、省電力かつ広域な通信が可能なIoT(Internet of Things)用の通信規格です。
IoTデバイスを接続するためには長距離通信が必要であり、IoTデバイスは一般的にバッテリー駆動となるため省電力が必要です。LoRaWANはこのようなニーズに応えるために開発されました。
本記事では、LoRaWANの基礎知識、通信方式、セキュリティについて説明し、IoT分野での活用方法についても解説します。[MQTTの記事はこちら]
LoRaWANの基礎知識
LoRaWANとは?
LoRaWANとは、Low Power Wide Area Networkの略称であり、長距離通信が可能な低消費電力の無線通信技術です。
IoT向けの無線通信規格として注目を集めています。LoRaWANは、LoRa(Long Range)と呼ばれるモデム技術を使用し、大規模なネットワークを構築することができるほか、センサーやデバイスなどのIoT機器に適した通信規格であるため、様々な用途で使用されています。
LoRaWANの通信方式
LoRaWANの通信方式は、LPWAN(Low-Power Wide Area Network)に属し、LoRa(Long Range)技術を採用しています。
LoRaは、低消費電力で長距離通信を可能にする技術で、無線周波数帯の利用効率を最大化することで、数キロメートル先までの通信が可能になっています。
LoRaWANは、このLoRa技術を使用した上位プロトコルであり、インターネットと接続することができるIoTデバイスと通信するために開発されました。LoRaWANは、エンドツーエンドのセキュリティ、低消費電力、長距離通信、そして大量のIoTデバイスをサポートすることができるため、IoTアプリケーションに適しています。
LoRaWANの周波数帯
LoRaWANは、世界中で使用できるように、異なる周波数帯をサポートしています。
一般的に、欧州とアジアでは868 MHz帯、北米では915 MHz帯が使用されています。オーストラリアやニュージーランドでは923 MHz帯が使用されています。
これらの周波数帯は、LoRaWANデバイスが低消費電力で長距離通信を行うために最適化されています。868 MHz帯と915 MHz帯は、広範囲なカバレッジを提供する一方、923 MHz帯は、高速で高密度の通信を可能にするために設計されています。
LoRaWANのセキュリティ
LoRaWANのセキュリティ機能
LoRaWANは、デバイスの認証、データの暗号化、およびセキュアな通信チャネルの確立など、多層のセキュリティ機能を提供しています。
まず、LoRaWANでは各デバイスに一意のデバイスIDとアプリケーションIDが割り当てられます。
これらのIDは、デバイスがネットワークに参加するために必要であり、LoRaWANネットワークがデバイスを識別できるようにします。
さらに、LoRaWANでは、データをAES-128ビット暗号化によって保護することができます。これにより、データがネットワークを通じて送信される際に外部からの盗聴を防ぎます。
LoRaWANはまた、アプリケーション層でペイロードの暗号化をサポートしており、この機能によりデータが送信される前に暗号化され受信時に復号されるため、ユーザーはセキュアなデータ転送を行うことができます。
LoRaWANにおける課題と対策
- 距離制限と障害物による影響
LoRaWANは低速な通信方式であり、通信距離にも制限があります。そのため建物の中や山間部など、障害物の多い場所では通信が難しくなります。
対策としては、通信を行うデバイスの設置場所や通信回数の調整、ゲートウェイの設置場所などを工夫することが挙げられます。また、リピーターと呼ばれる中継機器を導入することで、通信距離を伸ばすこともできます。
- デバイスの安全性の確保
LoRaWANは、IoTデバイスを接続するためのプロトコルであるため、デバイスの安全性が確保されていない場合、不正アクセスやサイバー攻撃を受ける可能性があります。LoRaWANを介してIoTデバイスにアクセスし、デバイスを乗っ取ることができるマルウェアも存在しています。
対策としては、デバイスのセキュリティに十分な配慮を行い、暗号化や認証などの技術を用いることが必要です。また、不正なアクセスを防ぐために、ネットワークレベルでの監視やセキュリティ対策を行うことも重要です。
- ネットワークの信頼性の確保
LoRaWANは、多くのデバイスが接続することができるため、大規模なネットワークを構築することが可能です。
しかし、ネットワークが過負荷になると通信が遅延したり、中断したりする可能性があります。また、ネットワークの構成や設定に不備があると、通信が不安定になることもあります。
対策としては、ネットワークの設計や設定に十分な配慮を行うことが必要です。また、ネットワークの監視やトラブルシューティングに備えた体制を整えることが重要です。
LoRaWANの活用方法
LoRaWANは、IoTの分野で広く利用されています。以下にLoRaWANを利用した成功事例をいくつか紹介します。
農業分野でのLoRaWAN利用事例
LoRaWANを利用した農業センサーシステムを使用することで、畑や牧場での土壌温度、湿度、PH値、気温、湿度などのデータを集めることができます。
これにより、農業プロセスを自動化し、農産物の品質や収量を向上させることができます。例えば、CropX社は、LoRaWANを使用した自動灌漑システムを提供しており、作物に必要な水分量を正確に管理することができます。
スマートシティ分野でのLoRaWAN利用事例
スマートシティ分野では、LoRaWANを使用して公共交通機関のスケジュール情報を提供したり、街路灯の点灯時間を制御することができます。LoRaWANを使用したゴミ箱にセンサーを設置することで、ゴミ箱の残容量をモニターし、ゴミ収集のスケジュールを最適化することなども可能です。
例を挙げると、フランスのグルノーブルでは、LoRaWANを利用したスマート街灯を導入しており、街路灯の点灯時間を制御することで光害を減らし、エネルギー消費を削減することに成功しています。[JETRO日本貿易振興機構]
まとめ
LoRaWANは、低消費電力で長距離通信が可能なLPWAネットワーク技術の一つです。
従来の無線通信技術よりもコストが低く、大量のIoT機器との通信が可能であるため、工場IoTなどの産業分野での利用が期待されています。LoRaWANはセキュリティ面においても強固な対策を講じているため、安全な通信が可能です。しかし、距離や障害物によって通信品質が低下することがある点が課題となります。
今後はLoRaWANの技術が進化することで、より高速で確実な通信が可能になり、IoTの普及が加速されることが期待されます。
産業分野だけでなく、スマートシティや農業分野など、様々な分野での活用が期待されるほか、LoRaWANの技術を応用した新しいサービスや製品が今後も登場することが予想されます。
LoRaWANは今後更に注目される技術であるといえるでしょう。