Cisco SD-Access SDN解説!ソフトウェア定義NWの実践ガイド

IT技術解説

ソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)の基本概念

ソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)は、ネットワークSEにとって不可欠な技術であり、従来のネットワーキングアーキテクチャからの革新です。SDNはネットワークの制御とデータフローを分離し、ネットワークリソースの柔軟で効率的な管理を可能にします。[記事一覧]

従来のネットワーキングとの違い

従来のネットワーキングでは、ネットワークデバイス(スイッチ、ルーター)が制御とデータ転送の双方を担当しており、ネットワーク全体を制御するには各デバイスの設定を手動で変更する必要がありました。これにより、ネットワークの柔軟性やスケーラビリティが制限されるという課題がありました。

SDNの進化のポイント

SDNでは、制御プレーン(ネットワークの制御を担当)とデータプレーン(ネットワークデータ転送を担当)が分離されています。これにより、中央集権的な制御が可能になり、ネットワーク全体の管理が効率化されます。また、プログラム可能なAPIを通じてネットワークを制御でき、アプリケーションやサービスによってネットワークの挙動を柔軟に変更できるようになります。

SDNのメリット

  • 柔軟性と効率性の向上: SDNにより、ネットワークリソースのダイナミックな制御が可能になり、アプリケーションの要求に応じてネットワークを調整できます。
  • 自動化とプログラム可能性: SDNはプログラム可能なインターフェースを提供し、ネットワーク管理タスクを自動化することができます。
  • セキュリティの向上: セグメンテーションやポリシーベースのアクセス制御など、セキュリティの向上が期待できます。

ネットワークSEが理解すべき重要なポイントは、これらの変化がネットワークの運用と管理に与える影響であり、これによって現代の要求に対応するための新しいアプローチが必要とされている点です。従来のネットワーキングからSDNへの移行は、ネットワークの柔軟性と効率性を向上させ、新しいサービスやアプリケーションの展開を容易にします。

Cisco SD-Accessの概要と特徴

Cisco SD-Accessは、シスコが提供する次世代のネットワーキングソリューションであり、ネットワークSEにとって非常に重要な技術の一つです。

以下では、Cisco SD-Accessの概要と特徴に焦点を当て、ネットワークSEが導入する際のメリットについて掘り下げます。

Cisco SD-Access 概要

Cisco SD-Accessは、ソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)の原則を基にしたプラットフォームで、ユーザー、デバイス、アプリケーションを統合的かつセキュアに接続することを可能にします。これにより、従来のネットワーキングの制約を打破し、ユーザーエクスペリエンスの向上とセキュリティの拡充を実現しています。

Cisco SD-Access 特徴

セグメンテーションとマイクロセグメンテーション

SD-Accessは、ネットワーク内のセグメンテーションを実現し、異なるユーザーグループやデバイスを論理的に分離することができます。これにより、ネットワーク内のセキュリティを向上させ、データの不正アクセスを防ぎます。また、マイクロセグメンテーションによって、細かな単位でセグメンテーションを行うことができ、セキュリティを一層強化します。

自動化とプロビジョニング

Cisco SD-Accessは自動化を重視しており、ポリシーの自動化やユーザーグループへの適用、新しいデバイスの追加に対する自動プロビジョニングなど、多くの作業を自動化することが可能です。これにより、ネットワークSEは手動の設定作業から解放され、迅速で効率的なネットワーク管理が実現されます。

セキュアなアクセス制御

Cisco SD-Accessは、ゼロトラストセキュリティモデルに基づいたアクセス制御を提供します。ユーザーやデバイスの認証、アクセスポリシーの厳密な適用により、ネットワークへの安全なアクセスが確保されます。これにより、不正アクセスやセキュリティの脅威からネットワークを守ります。

クラウドとのシームレスな対応

SD-Accessはクラウドとのシームレスな統合を実現し、クラウドネイティブなアプローチをサポートしています。クラウドリソースへの柔軟なアクセスやクラウドネイティブなアプリケーションの展開を容易にし、企業のデジタルトランスフォーメーションをサポートします。

メリット

セキュアで柔軟なネットワーク構築

SD-Accessによりセグメンテーションやマイクロセグメンテーションが容易になるため、ネットワークSEはセキュリティを犠牲にせずに柔軟なネットワーク構築が可能です。

自動化による効率向上

自動化されたポリシー管理やプロビジョニングにより、ネットワークSEは作業効率を向上させ、ヒューマンエラーのリスクを低減させます。

ゼロトラストセキュリティの確立

セキュアなアクセス制御により、ネットワークSEはゼロトラストセキュリティモデルを確立し、ネットワーク全体の安全性を向上させます。

未来に対応するクラウド統合

クラウドとのシームレスな対応により、ネットワークSEは将来の技術動向やビジネスニーズに迅速に対応でき、持続的な価値を提供します。

Cisco SD-Accessはこれらの特徴とメリットを融合させ、ネットワークSEによる効果的なネットワーク管理とセキュリティの確立を支援します。

SD-Accessとは

SD-Access(Software-Defined Access)は、シスコが提供するソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)ソリューションであり、ネットワークの効率性、セキュリティ、自動化を強化することを目的としています。

以下では、SD-Accessの基本原則や目的、および重要な機能に焦点を当てて詳細に説明します。

基本原則と目的

SD-Accessの基本原則は、ネットワークリソースの柔軟性を向上させ、セキュリティを強化することです。従来のネットワークアーキテクチャでは難しかったセグメンテーションやポリシーの適用を、SD-Accessはソフトウェア制御により容易に実現します。主な目的は以下の通りです。

ユーザーエクスペリエンスの向上

ユーザーグループやデバイスに基づいた細かなセグメンテーションにより、異なる要件を持つユーザーグループに対して最適なネットワーク環境を提供し、ユーザーエクスペリエンスを向上させます。

セキュアなアクセス制御

セグメンテーションとポリシーベースのアクセス制御により、ユーザー、デバイス、アプリケーションの組み合わせに基づいて細かなセキュリティポリシーを適用し、不正なアクセスや攻撃からネットワークを保護します。

自動化と効率化

ポリシーの自動化やプロビジョニングを実現し、ネットワーク管理タスクの自動化によってネットワークSEの作業効率を向上させます。これにより、迅速な変更や展開が可能となります。

重要な機能

セグメンテーション

SD-Accessでは、ネットワーク内のユーザーグループやデバイスを細かくセグメント化することが可能です。これにより、異なる部門やプロジェクト、セキュリティ要件を持つエンティティを独立して管理できます。

自動化

ポリシーの自動化とプロビジョニングにより、ネットワークの変更や新しいデバイスの追加が自動的に行われます。これにより、人的エラーを削減し、ネットワークの変更に柔軟かつ迅速に対応できます。

セキュリティ

SD-Accessはセキュリティを重視しており、ゼロトラストモデルに基づいたアクセス制御を提供します。ユーザー、デバイス、アプリケーションに対する厳格な認証とアクセスポリシーの適用により、ネットワーク全体のセキュリティを確保します。

アナリティクスと可視性

SD-Accessはネットワーク内のトラフィックやデバイスの動向をモニタリングし、高度なアナリティクスと可視性を提供します。これにより、問題の早期発見やトラブルシューティングが容易になります。

IoTやクラウドへのシームレスな対応

SD-AccessがIoTやクラウドとの統合をどのように実現するか、ネットワークSEが把握すべきポイントと未来の可能性について考察します。

SD-AccessがのIoTへの対応

SD-Accessは、IoTデバイスとのシームレスな統合を実現します。IoTデバイスは異種のセンサーやアクチュエータを搭載し、様々な通信プロトコルを使用することが一般的です。SD-Accessはこれらの異種のデバイスを統一的なポリシーに基づいて管理し、セキュリティの確保と柔軟なアクセス制御を実現します。また、IoTデバイスがネットワークに接続された際に自動的に検知し、ポリシーの適用やセグメンテーションを行います。

SD-Accessがクラウドへの統合

SD-Accessは、クラウドネイティブなアプローチをサポートし、クラウドプロバイダーとの連携を容易にします。クラウド内のアプリケーションやリソースに対して、ユーザー、デバイス、アプリケーションごとの細かいポリシーを適用できます。また、SD-Accessはクラウド内での仮想マシンやコンテナの動的な移動にも対応し、ネットワークの柔軟性を保ちながらクラウドリソースに安全かつ迅速にアクセスできるようになります。

SEが把握すべきポイント

プロトコルと互換性

IoTデバイスとクラウドプロバイダーは様々な通信プロトコルを使用することがあります。SEはSD-Accessがサポートするプロトコルと、IoTデバイスやクラウドプロバイダーが使用するプロトコルの互換性を確認する必要があります。これにより、円滑な統合が実現されます。

ポリシーの調整

IoTデバイスやクラウドリソースに適用されるセキュリティポリシーは、ネットワーク内の他の要素と調和しなければなりません。SEはポリシーの一貫性を確保し、ネットワーク全体で統一的かつセキュアなアクセスを提供する役割を果たします。

デバイスの増加に対応するスケーラビリティ

IoTデバイスの急増に伴い、SD-Accessはそのスケーラビリティを維持し、大規模なデバイスネットワークに柔軟に対応することが期待されます。将来的には、数十億台単位のデバイスがネットワークに接続される可能性があります。

AIとの統合

将来的には、人工知能(AI)や機械学習(ML)との統合が進むことが予想されます。SD-Accessがネットワーク内のデータを解析し、パターンや異常を検知する能力が向上すれば、セキュリティの向上やトラブルシューティングの効率化が期待されます。AIとの連携により、ネットワークの運用とセキュリティの分野でより高度で即応性のあるソリューションが提供されるでしょう。

SD-Accessの設定手順

SD-Accessの初期セットアップは、以下の手順に従って行います。これにより、SD-Accessの基盤が整い、セグメンテーションや自動化の機能を活かしたネットワークが構築できます。

Cisco DNA Centerへのアクセス

  1. Cisco DNA Centerにログイン: Webブラウザを使用してCisco DNA Centerにアクセスし、管理者権限でログインします。
  2. 初期設定ウィザードの起動: Cisco DNA Centerのダッシュボードから初期設定ウィザードを起動し、SD-Accessの基本設定を始めます。

サイトの設定

  1. サイトの作成: サイトは物理的な場所を表し、SD-Accessの基本単位です。必要に応じて、物理的なサイトに基づいてサイトを作成し、地理的な配置を定義します。
  2. サイトヒエラルキーの構築: 複数のサイトを階層的に構築し、親子関係を定義します。これにより、広範なネットワークの管理が容易になります。

ファブリックの設定

  1. ファブリックの作成: ファブリックはSD-Accessネットワーク全体を指します。Cisco DNA Centerを使用して、新しいファブリックを作成し、基本的な設定を行います。
  2. ネットワークデバイスの追加: ファブリック内に組み込むネットワークデバイス(スイッチやルーター)をCisco DNA Centerに登録し、ファブリックに組み込みます。
  3. デバイスの検証: 追加されたデバイスが正しく検出され、設定が適用されていることを確認します。

ファブリックドメインの構築

ファブリックドメインは、SD-Accessネットワーク内でセグメンテーションを行うための基本的な概念です。以下は、ファブリックドメインの構築手順です。

ファブリックドメインの作成
  1. 新しいファブリックドメインの作成: Cisco DNA Center上で、新しいファブリックドメインを作成します。これには、ドメイン名やID、関連するサイトなどの情報が含まれます。
  2. ポリシーの適用: ファブリックドメインにセグメンテーションやアクセスポリシーを定義し、関連するデバイスに適用します。
セグメンテーションの設定
  1. セグメンテーションポリシーの作成: セグメンテーションはファブリック内のユーザーグループやデバイスを論理的に分離する重要な概念です。ポリシーを作成し、セグメンテーションの条件を定義します。
  2. ポリシーの適用: 作成したセグメンテーションポリシーをファブリックドメインに適用し、ネットワーク内の適切な場所にポリシーを反映させます。
オーケストレーションの設定
  1. オーケストレーションツールの統合: SD-Accessは、ポリシーの自動化やプロビジョニングを行うためのオーケストレーションツールとの統合が可能です。必要に応じて、これらのツールを統合し、効果的なネットワーク管理を実現します。
  2. 自動化の検証: オーケストレーションによる自動化が正しく機能しているかを検証し、ネットワーク変更や新規デバイスの追加が円滑に行えることを確認します。

以上がSD-Accessの基本設定手順とファブリックドメインの構築方法の要点です。これにより、ネットワークSEはセグメンテーションや自動化などの機能を有効活用し、柔軟でセキュア

なネットワークを構築する準備が整います。次に進む前に、これらの手順が正常に完了したことを確認し、ネットワークデバイスやポリシーの設定が適切に反映されていることを確認しましょう。

ファブリック内のセキュリティ設定

SD-Accessのセキュリティ設定では、アクセスポリシーの定義やマイクロセグメンテーションの導入が重要です。

アクセスポリシーのセキュリティ設定
  1. アクセスポリシーの作成: セキュリティを向上させるために、アクセスポリシーを作成します。ポリシーはユーザーグループやデバイスごとに異なるアクセス権を設定するためのものです。
  2. アクセスポリシーの適用: 作成したアクセスポリシーをファブリック内の適切な場所に適用します。これにより、異なるセグメント内でのアクセス権が管理されます。
マイクロセグメンテーションの導入
  1. アプリケーションの特定と分類: マイクロセグメンテーションでは、アプリケーションごとにセグメントを作成し、それに基づいてセキュリティポリシーを適用します。アプリケーションの特定と分類を行います。
  2. ポリシーの適用: 特定したアプリケーションに対して、セグメンテーションポリシーを適用します。これにより、アプリケーションごとに異なるセキュリティポリシーを確立します。

ベストプラクティス

SD-Accessをより効果的に運用するためには、以下のベストプラクティスを考慮することが重要です。

ネットワークの可視性向上
  1. アナリティクスの活用: SD-Accessはネットワーク内のトラフィックやデバイスの動向をモニタリングできます。この情報を活用し、ネットワークの可視性を向上させるためにアナリティクスツールを使用します。
  2. セグメンテーションの見直し: 定期的にセグメンテーションポリシーを見直し、変更があれば適切に更新します。ユーザーグループやデバイスの変化に対応することが重要です。
デバイスのモニタリングとトラブルシューティングの手順
  1. デバイスの監視: ネットワークデバイスの稼働状況や性能を監視し、異常があれば早期に検知します。Cisco DNA Centerのツールを活用してモニタリングを行います。
  2. トラブルシューティングの手順: トラブルが発生した場合、迅速に原因を特定し解決するための手順を用意します。ログの確認やデバイスの診断ツールを活用します。

Cisco SD-Accessの今後のアップデートや進化について

Cisco SD-Accessは継続的な進化を遂げ、ネットワークの柔軟性、セキュリティ、管理効率を向上させるために新機能やアップデートが期待されています。以下に、Cisco SD-Accessの今後のアップデートや進化についての展望を明示します。

AIとの更なる統合

将来的には、Cisco SD-Accessは人工知能(AI)や機械学習(ML)との更なる統合を進めるでしょう。これにより、ネットワーク内での異常検知や予測分析が強化され、セキュリティインシデントへの迅速な対応やトラブルシューティングが向上します。ネットワークが自己適応的になり、運用の複雑性が低減されることが期待されます。

IoTデバイスへの特化

IoT(Internet of Things)デバイスがますます増加する中、Cisco SD-Accessはこれに特化した機能やポリシーの提供を強化するでしょう。異種のIoTデバイスとのシームレスな連携、セキュアな運用、大量のデバイスを扱うためのスケーラビリティの向上が期待されます。

クラウドネイティブなアプローチの拡充

クラウド環境の普及に合わせて、Cisco SD-Accessはクラウドネイティブなアプローチを拡充していくでしょう。これにより、クラウドサービスとのシームレスな連携が向上し、柔軟性や運用効率が向上します。新たなクラウドプロバイダーとの統合や機能の拡張が期待されます。

ユーザーエクスペリエンスの向上

ユーザーエクスペリエンスの向上が重要なトレンドとなっています。Cisco SD-Accessは、ユーザーがネットワークリソースにより迅速かつ安全にアクセスできるように、ユーザーコントロールの向上やパフォーマンスの最適化に注力するでしょう。モバイルワーカーへの対応や新たなデバイスの適用において、柔軟性を提供します。

新たなセキュリティ機能の導入

セキュリティへの脅威が日々進化する中、Cisco SD-Accessは新たなセキュリティ機能の導入に焦点を当てるでしょう。エンドツーエンドのセキュリティポリシーの適用や、ゼロトラストセキュリティモデルの更なる補強が予想されます。これにより、ネットワーク全体にわたる包括的なセキュリティが確立されます。

プログラム可能なネットワークの進化

SD-Accessはプログラム可能なネットワークの実現に向けて進化を続けます。新たなAPI(Application Programming Interface)やオープンソースのツールとの統合を進め、ネットワークをより柔軟に制御できる環境を提供します。これにより、ユーザーは自身のニーズに合わせてネットワークを構築しやすくなります。