DFSとは?5GHz帯無線チャネルの検出に必要な理由と仕組みを解説

IT技術解説

ネットワークの無線化が広がり、5GHz帯無線通信についても需要が高まっている中、利用者のニーズに応えるため、無線通信における問題点にも注目が集まっています。

5GHz帯における無線通信は高速かつ安定した通信が可能な一方、周波数帯域の広さから他の無線通信機器や機器間の干渉が発生しやすいという問題があります。

このような問題を解決するため、DFS(Dynamic Frequency Selection)が導入されました。DFSは、簡単に説明すると、5GHz帯無線通信で使用するチャネルの検出を行い、他の無線通信機器との干渉を回避することができる技術です。

今回は、このDFSに関すして用語の意味、仕組み、問題点やニーズについて、詳しく解説していきます。

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5GHz帯無線通信とDFSの概要

5GHz帯無線通信による高速・大容量通信の実現に伴い、干渉が問題となっています。

そのため、無線規制においてDFSが義務化され、5GHz帯無線通信における干渉回避が必要となっています。まず5GHz帯無線通信とDFSの概要について説明します。

5GHz帯無線通信とは?

5GHz帯無線通信とは、IEEE 802.11n/ac/axなどの無線LAN規格において利用される周波数帯の1つです。これらの規格は、一般的に2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯を利用しています。

5GHz帯は、2.4GHz帯に比べてより広い帯域幅を持ち、より高速なデータ通信が可能です。しかし、2.4GHz帯に比べて伝播特性が劣るため、電波が壁や建物に弱く、通信距離が短いという問題があります。

また、5GHz帯には、一部の周波数帯において、気象レーダーと干渉する可能性があるという問題があります。これに対処するために、DFSという技術が利用されています。

5GHz帯無線通信における問題点

5GHz帯無線通信には、以下のような問題点が存在します。

  1. 伝播特性が劣る:5GHz帯の電波は、2.4GHz帯に比べて壁や建物に弱く、伝播特性が劣るため、通信距離が短いという問題があります。
  2. 気象レーダーとの干渉:5GHz帯には、一部の周波数帯において、気象レーダーと干渉する可能性があります。このため、無線機器が自動的に周波数帯を変更するDFS技術が必要とされています。
  3. 帯域幅の制限:5GHz帯には、使用できる帯域幅が2.4GHz帯に比べて少ないため、高速なデータ通信が必要な場合は、複数のチャネルを同時に利用することが必要です。
  4. 無線LAN機器の対応状況:5GHz帯を利用した無線LAN機器は、2.4GHz帯に比べて普及が遅れているため、すべての機器が5GHz帯に対応しているわけではありません。また、対応していても、高価な場合が多いため、普及が進んでいません。

DFS(Dynamic Frequency Selection)とは?

DFS(Dynamic Frequency Selection)は、5GHz帯無線通信における周波数帯選択の仕組みです。5GHz帯には、無線通信に使える周波数帯のほかに、気象レーダーなどが使用する周波数帯があります。このため、5GHz帯を利用する場合には、この気象レーダーなどの周波数帯と干渉しないよう、周波数帯を自動的に切り替える必要があります。

DFSは、無線LAN機器が自動的に周波数帯を切り替えるための技術です。無線LAN機器は、利用可能な周波数帯をスキャンし、気象レーダーの周波数帯と重ならない周波数帯を選択します。DFSでは、このような周波数帯の選択が自動的に行われるため、ユーザーが手動で周波数帯を設定する必要はありません。

ただし、DFSは、周波数帯の切り替えに伴い、一時的に通信が途切れることがあります。このため、無線LAN機器がDFSに対応していない場合、周波数帯を切り替えることができず、通信が途切れることがない2.4GHz帯を利用することが推奨されています。

DFSが必要な理由

DFSが必要な理由は、無線アクセスポイントが発する5GHz帯の電波による無線通信と、気象レーダーなどの電波が干渉することによる周波数帯の競合を避けるためです。5GHz帯で利用される周波数帯は、気象レーダーなどの電波も使用しており、チャネルの干渉が発生する可能性があります。

DFSは、気象レーダーなど公的な電波との干渉を避けるために導入された技術です。無線LAN機器は、利用可能な周波数帯をスキャンし、気象レーダーの周波数帯と重ならない周波数帯を選択します。このように、DFSによってアクセスポイントが利用しているチャネルを自動的に切り替えます。

また、DFSは無線LAN機器が規制に適合していることを示す重要な要素でもあります。5GHz帯は、無線通信以外の用途にも利用されるため、各国で異なる周波数帯が規制されています。DFSに対応していることは、無線LAN機器が規制に適合していることを示すため、海外などでの利用に必要な要件となっています。

DFSによる干渉回避

DFSが作動した無線LAN機器(アクセスポイント)は、その時点で利用可能な周波数帯をスキャンし、気象レーダーの周波数帯と重ならない周波数帯を選択します。これにより周波数帯の競合を回避することができます。

しかし、DFSが作動中しスキャンを行っている際のアクセスポイントは約60秒間利用が不可となるため、付近の無線接続端末はネットワーク通信が行えなくなります。

更に、万が一気象レーダーなどのと電波干渉が発生し他場合は、そのアクセスポイントは約60分間利用ができなくなる。という特徴があります。

CACとは?

CACとは、DFSによる周波数帯の変更に伴って発生する通信の一時停止を制御するための技術であり、「Channel Availability Check」の略称です。

DFSによる周波数帯の変更は、気象レーダーの電波干渉を避けるために必要ですが、周波数帯を変更することで通信が一時的に途切れることがあります。例えば、無線LANに接続している端末が、DFSによって周波数帯が変更されたアクセスポイントから別のアクセスポイントに切り替わる場合、端末は一時的に通信が途切れることがあります。

また、VoIPやストリーミングなどのリアルタイム通信では、瞬時に通信が途切れることは受け入れられないため、通信が途切れないように制御する必要があります。

こうした問題を解決するために、CACが使用されます。CACは、周波数帯を変更する前に、一定時間(DFS Wait Time)通信を停止し、周波数帯の使用状況を確認します。この時間中、新しい周波数帯を使用している他の端末の通信状況を監視し、通信が途切れることがないように制御します。

具体的には、無線LAN機器がDFS Wait Time中に、新しい周波数帯をスキャンし、周波数帯を変更する必要があるかどうかを判断します。変更が必要な場合には、無線LAN機器は、一定時間通信を停止して、新しい周波数帯に変更します。この間、CACによって通信が途切れないように制御されます。

CACは、DFSによる周波数帯の変更に伴って発生する通信の一時停止を制御するための重要な技術です。DFSと組み合わせて、高速かつ安定した無線通信を実現するために不可欠な技術と言えます。

DFSの義務化

DFSは、無線LAN機器の利用において5GHz帯における干渉回避を目的とした技術です。しかし、このDFSは必ずしもすべての国で義務化されているわけではありません。

欧州連合(EU)では、5GHz帯の無線LAN規制においてDFSが必須とされており、各国の規制当局が厳格に監視を行っています。また、アメリカ合衆国では、FCCによってDFSが義務化されており、規制違反を犯した場合には厳しい罰則が科されることがあります。

日本においては、2017年11月に総務省が定めた技術基準適合証明規則によって、新たに5GHz帯の規制が設けられ、DFSが義務化されることとなりました。これにより、5GHz帯を利用する無線LAN機器は、DFSに対応していなければ認証がおりず、販売・使用ができなくなりました。

このように、各国でDFSの義務化が進んでいることから、DFSに関する理解や対応がますます重要になっています。

DFSの仕組みについて

現在、5GHz帯無線通信において、DFSは重要な役割を果たしています。DFSは、5GHz帯の無線周波数帯域における干渉回避を目的としており、この目的を達成するために、DFSは無線チャネルの使用可否を判断するために、レーダー検出機能を使用します。

DFSが動作するためには、無線チャネルを利用する前に、レーダー検出機能によって、チャネル上に使用可能な周波数帯域があるかどうかを確認する必要があります。もし使用可能な周波数帯域がなければ、DFSは自動的に別の無線チャネルに切り替えることになります。

DFSに関連する技術

DFSは、5GHz帯無線通信において重要な技術ですが、その他にも、5GHz帯無線通信に関連する技術があります。例えば、TPE(Transmit Power Envelope)やTPC(Transmit Power Control)などがあります。

TPEは、無線通信の送信出力レベルを制御する技術であり、DFSと同様に、干渉回避の目的で使用されます。一方、TPCは、無線通信の送信出力レベルを自動的に調整する技術であり、送信出力の最適化や電力の節約に役立ちます。

DFSに関する最新動向

DFSは、5GHz帯無線通信において重要な技術であるため、その最新動向についても紹介することが必要です。例えば、2021年には、米国FCC(Federal Communications Commission)によって、5GHz帯におけるDFSの動作に関する規制が改定され、DFSの動作をより効率的に行えるようになりました。

また、2022年には、日本でも5GHz帯無線通信に関する規制が改定される予定であり、この改定によって、DFSの動作がより一層重要になると考えられます。